「子供の自殺増加の背景」15・いじめ発見のきっかけ

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要点

  • 教師のいじめ発見能力は高くなく、教師に過剰な期待をするべきではない。
  • 現実的には、いじめのアンケート調査がいじめ発見に大きく寄与している。
  • 誰かがいじめを発見することを期待するのではなく、間接的にいじめを訴える機会を作ることが重要である。

いじめ発見のきっかけ

この表は2018年度の文科省の調査に基づいており、その単年度のいじめ発見のきっかの構成比を示している。ここにあるように、過半のいじめは学校によって発見されている。ただし、学校という項目の中をよく見ると、実は、その大部分はアンケート調査によって発見されている。つまり、学校がいじめのアンケート調査を行い、そこでいじめが申告され、学校がいじめを発見したとカウントされている。

学校のいじめ発見の取り組み自体は評価されるべきだとは思うが、一方で、これは教師がいじめを発見したということではない。この数字から明らかなように、いじめの大部分は教師によって見付けられていない。学級担任とその他職員を入れてもいじめの発見の構成比としては10%超に過ぎず、高校に至っては学級担任が発見したケースは6%に過ぎない。

教師がいじめを発見できない最大の要因はいじめが隠れて行われるからだろう。一方で、いじめに気づいていても理解していないように努めるケースもあるはずである。正常性バイアスが働き、生徒間で問題行動が起こっていないという前提を持っているため、全ての現象がいじめには見えなくなっている。つまり、目の前で起こっている現象がいじめではない行為だと理解し、問題にあえて直面しない心理状態になっている。

如何なる理由で教師がいじめを発見できないかは様々な議論があり得るが、統計的に見て、教師のいじめ発見能力は全く高くない。我々は教師に対して過度な期待を持つべきではなく、また、教師も自らの発見能力を過信すべきではない。教師が全ての問題を解決できると考えるのは教師にとっても不幸であり、いじめを受けている生徒にとっても不幸である。

それよりも、統計が指し示しているのはアンケート調査の有効性である。これを学校の成果と認識しても構わないが、教師の能力とははっきりと区別すべきである。

もう一つの大きないじめの発見のきっかけが本人である。つまり、いじめを受けている本人が自己申告することである。アンケートと本人を足すと7割近くになっており、要するに自己申告がいじめの最大の発見のきっかけになっている。

結局のところ、いじめを発見するにはいじめの存在を申告する機会を作るしかない。特に、間接的にいじめを訴える機会を作ることが重要であり、アンケート調査は極めて良く機能している。

いじめを本質的にゼロにすることは難しいし、子供達の間の心理的葛藤をなくせない。しかし、申告する機会を作ればいじめを抑制できる。特に、重大事態に至るような問題を抑えることが重要であり、そのためにはいじめを容易に申告できる体制を作ることが重要になる。

 

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