台湾有事に関する日本の政策方向性

  • 日本には現状の米中関係を変える力はない。
  • 米中関係は戦争にまで至らないという基本的前提で行動する。
  • 日本はAlliesの側に立つ。
  • 中国の底線、「一つの中国」は踏み越えない。
  • アメリカが日本に求めているもの。
  • 人民解放軍が台湾侵攻した際に、日本が傍観できるはずがない。
  • 台湾有事に関しても、日本の防衛に関しても準備を怠らない。
  • 何も起こらないという基本的前提であることと、準備を怠らないことは両立する。

日本には現状の米中関係を変える力はない。

第二次大戦後の国際政治を鑑みるに、日本には米中関係に影響を及ぼせるような力はなかった。現状の米中関係が始まるのはニクソン訪中からで、アメリカが電撃的に中国政策を変え、日本はそれに追随しただけである。アメリカがキッシンジャーを極秘裏に送り込んで交渉したという背景もあるが、日本が何の影響も与えられなかったのは間違いない。

ただし、日本政府が全てにおいてアメリカの意向を受けていたわけでもない。天安門事件後の中国制裁に対して、日本は融和的立場に立っており、国際交渉の場においてもその主張を続けている。そういう意味では、全てがアメリカの追随ではないものの、アメリカ政府の方針に影響を与えられないという点は変わらない。

政府 天安門事件当日中国に融和方針決める

https://www.nhk.or.jp/politics/articles/lastweek/50685.html

これらの先行する時期と比べて、現状の一番大きな変化は中国が強大になったことである。そうなってくると、日本が関われる余地はもっと狭くなる。日本が仲介役として、米中間で大活躍できると思うのは単なる夢物語である。アメリカと中国の対立は大国の本質的問題であって、他の国が直接的に関与することは出来ない。関われる範囲というのは、どちらの側に付くかくらいである。

世界史的に見て、現状の国際政治はパクス・アメリカーナに対するパクス・シノワの挑戦と言える。新興国が現在の覇権国に対する挑戦の構図であり、それは覇権理論の指し示すとおりである。それ以上に、アメリカも中国もこの覇権理論を十分に理解している。だからこそ、習近平は今週火曜日(2021年4月22日)に中国は覇権を絶対に求めないと発言している。

“No matter how far it develops, China will never seek hegemony, expand, seek spheres of influence or engage in an arms race,”

https://www.nbcnews.com/news/asia/chinese-president-xi-jinping-criticizes-world-hegemony-jab-u-s-n1264608

中国が覇権を目指すと、必然的にアメリカと衝突することになる。あるいは、中国が覇権に近づく前に、アメリカが予防的に中国を抑えこもうとする。その最終形態が戦争であり、少なくとも、中国は現状においてアメリカとの更なる紛争を避けたいという意思を持っており、それが習近平の発言へと繋がっている。

この関係が長期的にどうなって行くかは予断を許さないが、少なくとも、アメリカと中国の対立は世界システム上の大国の争いであり、日本が仲介者として介入できる余地はない。

米中関係は戦争にまで至らないと言う基本的前提で行動する。

日本の今後の大前提は米中がこのまま平和を維持するということである。ベストは戦わないことであり、戦争が起きないという前提で外交を運営するしかない。日本には現状を変えられないのだから、変わらないという前提を持つしかない。少なくとも、現状において中国は恭順の意を示しており、アメリカも基本的には全面戦争はしたくないだろう。

アメリカと中国が戦争することになれば、それが全面戦争にまで発展する可能性が高い。それに、両国は核保有国であり、その戦争は悲惨な結果になる可能性がある。特に、アメリカの核兵器保有量は尋常ではなく、普通であれば、あれに対抗しようとは思わない。

だから、米中が戦争をする可能性が高いわけではない。ただ単に、中国が強大化して来たために、アメリカとの戦争の可能性が排除できなくなっただけである。もちろん、ほぼ確率的にゼロのところから数パーセントに動いてくると大きな変化であり、それが現状の国際政治で起こっていることである。

つまり、かなりの高い可能性で、米中の戦争は起きないはずであり、日本はその大前提に基づいて行動すべきである。現状において変化は起きているが、まだ過剰に反応する必要はない。

日本はAlliesの側に立つ。

ただし、戦争にまでは至らないにしても、もっと対立が過激化する可能性は十分にある。その際には、日本はアメリカ側に付く以外の選択肢はない。AlliesとAxisが対立した時、日本は迷うことなくAlliesに入る。第二次世界大戦の敗戦から学ぶことは多数あるが、Alliesに入るというのはその中でも重要事項の一つである。

今回のAlliesは自由、民主主義、人権、法の支配等々の概念を打ち立てている。前回のAxisは全体主義を掲げていたが、今回はどのような形で対抗するのかは分からない。この掲げる概念の差というのは、実質的には大きな差を生み出す。それは「道」の問題であり、正しさの問題であり、正しい戦いをした側が基本的に勝つと理解されている。

それをどのように説明すれば良いのかは難しいが、戦争において人員を動員する上において、正しい戦いをする必要がある。アメリカ的に言うと、right thing to doであり、イスラム過激派はこれをジハードと呼んでいる。このように戦いの正義は常に唱えられており、その正しさが強い方がより多くの力を動員できる。それが「道」の問題であり、この概念自体は中国の物なので、中国もこの点ははっきりと理解している。

日本には中立という選択肢はない。日本の論調の中には微妙な問題があり、アメリカよりの中立という立場と取れると思っている人たちがいるんじゃないかと思っている。もちろん、どんな意見でも自由に持つことは出来るが、問題はその背景にあって、日本がアメリカと中国の仲介者になれると思っているから、そんな意見が出てくるんじゃないかと思っている。

現状の米中対立は世界システム上の覇権の対立であり、日本が中間に入ることは出来ない。仮に、日本が無理矢理中立の位置に付くと、最終的に、日本は勝者にはなれず、結局は世界史的な敗者となる。勝者が歴史を作るのであり、日本はAlliesに入る以外の選択肢はないし、積極的に、Alliesの求める方向性に共鳴すべきである。それは、自由、民主主義、人権、法の支配といったものである。

中国の底線、「一つの中国」は踏み越えない。

日本が今後中国と相対していくために、もっと中国のことを理解した方が良い。完全な理解は必要ないものの、最低限の知識がないと中国政策が歪んでしまう。

その上で、「一つの中国」という概念を越えるのが難しいことを理解する必要がある。この概念は毛沢東の路線で、アメリカがそれを受け入れた時に不可逆な流れになる。中国は外交関係を作る上でこの路線を追求し、中華人民共和国との関係を持とうとする国に対しては、台湾との断交を求め続けていた。それはアメリカが受け入れた時点で確定的になり、今でもその方向の外交政策は続いている。

http://www.ritouki.jp/wp-content/uploads/2015/01/1972Shanghai.pdf

念のためであるが、中台関係においては、かならずしも一つの中国という概念が、現状において存在しているわけではない。これに該当するのが九二共識と呼ばれるもので、中国は中台関係の前提に九二共識、つまり「一つの中国」を含んだ概念が存在していると主張しているが、現状の台湾政府は九二共識を受け入れていない。台湾の国民党はその存在を認めているが、基本的に、中国だけが主張している概念である。

安全保障関係において、日本も台湾を国として認められない。それは田中内閣における日中共同声明から始まっており、この時に、日本も「一つの中国」という概念を受け入れた。それは中国が国交を持つ前提であり、容易に変えられるようなものではない。中国に対する人権問題批判は中国は聞きたくないだろうが、それだけで国交がなくなるということはない。一方で、「一つの中国」を否定すると、おそらく断交になるため、そんなに簡単に乗り越えられる壁ではない。

この点を簡単に言う人たちがいるが、日本が正式に台湾を国家として認めると、それは「一つの中国」を否定することになるため、おそらく中国とは断交することになり、ほぼ敵国だと宣言するようなものである。もちろん、意見を持つことは自由だが、どのような結果が起こるのかはちゃんと理解した方が良い。

アメリカが日本に求めているもの。

アメリカは台湾政策において、この「一つの中国」を回避する仕組みを作っている。アメリカが中国と国交回復するのはカーター政権の時であり、この際に、ぼほ同時に台湾関係法を作る。そこにおいて、アメリカは台湾に対して安全保障供与を行っている。中国はこのような関係に対して不満を持っており、アメリカが台湾して武器売却をする度に抗議しているが、法律自体は先に存在しているため、法律自体を変えられないでいる。

この点において、アメリカは法の支配を貫徹させていると言える。日本は法の支配に関して甘いところがあり、いつでも超法規的措置が執れると思っている節があるが、乗り越えられない壁も沢山ある。その好例が台湾関係であり、日本は中国との関係において、多くのことを縛られている。

それではアメリカが日本に何を求めているのかという点になるが、実は、アメリカは基本的に、この台湾関係法の枠組みの話をしている。

先日(2021年4月16日)の日米首脳会談において、台湾の名前が共同宣言の中に入れられた。そこには台湾海峡の平和的解決を訴える文言が入れられている。

We underscore the importance of peace and stability across the Taiwan Strait and encourage the peaceful resolution of cross-Strait issues. 

https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2021/04/16/u-s-japan-joint-leaders-statement-u-s-japan-global-partnership-for-a-new-era/

この文言は台湾関係法の第2条B(3)項を受けたもので、アメリカ政府は中華人民共和国との国交回復が台湾問題の平和的解決を前提としているという条項を入れている。

Section2-b-3

to make clear that the United States decision to establish diplomatic relations with the People’s Republic of China rests upon the expectation that the future of Taiwan will be determined by peaceful means;

https://www.ait.org.tw/our-relationship/policy-history/key-u-s-foreign-policy-documents-region/taiwan-relations-act/

そして、これが第3条Bに繋がっており、アメリカは台湾に対する防衛供与まで出来ることになっている。

Section3-b

The President and the Congress shall determine the nature and quantity of such defense articles and services based solely upon their judgment of the needs of Taiwan, in accordance with procedures established by law. 

https://www.ait.org.tw/our-relationship/policy-history/key-u-s-foreign-policy-documents-region/taiwan-relations-act/

つまり、中国の人民解放軍が台湾を攻めると、台湾関係法に規定する問題になり、アメリカ大統領と議会が軍事出動するかどうか協議することになる。アメリカが日米首脳会談において、台湾界海峡の平和的解決と言っているのは台湾関係法に基づいている。

では、どうしてアメリカが日米首脳会談で台湾問題を採り上げたのかという点になるが、それはランド研究所が行った台湾有事のシミュレーションに関係していると思う。元々、アメリカは人民解放軍が台湾を攻めても、絶対的に勝てる自信があった。しかし、最近のシミュレーションではアメリカが負ける可能性が出来てきたと言っている。

In tabletop exercises with America as the “blue team” facing off against a “red team” resembling China, Taiwan’s air force is wiped out within minutes, U.S. air bases across the Pacific come under attack, and American warships and aircraft are held at bay by the long reach of China’s vast missile arsenal, he said.

https://www.nbcnews.com/politics/national-security/china-s-growing-firepower-casts-doubt-whether-u-s-could-n1262148

この負けるケースのシミュレーションにおいて、中国は太平洋におけるアメリカの空軍基地を攻撃するとなっている。おそらく主要基地を全て攻撃するという意味で、中国がグアムのアンダーセン基地、フィリピンのクラーク基地、そして、日本の嘉手納に対して先制攻撃すれば、中国がすぐに制空権を奪えるということを示唆している。

つまり、アメリカが台湾防衛できないケースにおいて、中国は先に嘉手納を攻撃する。これらのアメリカ基地を先制攻撃するとアメリカと中国の全面戦争になるため、それは容易だとは思えないが、アメリカはその可能性を考えているという意味である。

そして、嘉手納基地が攻撃されるというのは日米安保条約第5条に抵触する状態になる。つまり、中国が日本にある米軍基地を先制攻撃してから台湾侵攻を始めるという前提においては、日本はアメリカと共に中国と戦うことになる。それが日米首脳会談の文言の論理的帰結であり、中国に対して、それをはっきりとした形で見せたということである。

おそらくであるが、嘉手納が先に攻撃されない前提であれば、アメリカは台湾を防衛できると考えているのかも知れない。

人民解放軍が台湾侵攻した際に、日本が傍観できるはずがない。

このシナリオ通りに進めば、日本はそのまま自衛のための戦争に参加することになる。ただし、中国がどうやって台湾に侵攻するのかは分からない。中国は2021年4月15日から台南沖合で軍事訓練を始めた。

【北京時事】中国海事局は14日、「実弾射撃演習」を行うため、15~20日に広東省沖に航行禁止区域を設定した。

https://news.yahoo.co.jp/articles/30ae8b018ea0ba4be59f9d1cf539783803df4f0b

中国が台湾に侵攻する際に、アメリカ基地を先制攻撃すると全面戦争にまで発展するため、それを避けるためには台湾北部からではなく、台湾南部から侵攻するという方針を採るのかも知れない。

そのような状況になると、日本はもっと難しい状況に追い込まれる。日本は攻撃されないため、日本が台湾防衛に関与できる余地はかなり狭まる。それは根本的に、現在の有事法制が台湾有事を前提に作られていないからである。以下の読売新聞の記事にある通り、日本は周辺有事に関して、重要影響事態、存立危機事態、武力攻撃事態の3つに分類している。

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20210417-OYT1T50374/

日本にある基地を攻撃せずに中国が台湾侵攻を始めた場合、日本はおそらく何もできない。その背後にあるのが、「一つの中国」という概念であり、これを前提にすると、日本は台湾に対して集団的自衛権も主張できない。日本がアメリカよりも先んじて「一つの中国」を否定できるはずがない。

アメリカは日本が攻撃された際に集団的自衛権が発動され、アメリカと一緒に戦うことを理解しているが、現状の日本の法制下において、それ以上のことはできないのを理解している。それは日米安保第5条の論点の一つであり、日本は現行法以上の活動ができない。

ただし、現実問題として、台湾有事が起こった際に、日本が何もしないということはほぼできない。台湾有事という言い方がイメージを弱めているのかも知れないが、物理的に、中国の人民解放軍が台湾を攻めて、台湾の人たちが抵抗し、それが短くても数週間続く。そして、その後に台湾は更に蹂躙されることになるが、その状況下で、日本に本当に何もしなくて良いと思えるのだったら、おそらく想像力が欠如している。

それでは日本はどうするのかという問題になるが、日本には事前に台湾に対して法的保障はできない。台湾は国でないため集団的自衛権の対象にもならず、それを乗り越えるためには「一つの中国」を超える必要がある。結局、日本は中国による台湾侵攻が現実化してから態勢を整えるしかない。

台湾有事に関しても、日本の防衛に関しても準備を怠らない。

台湾有事が起こった際に、日本ができる王道は憲法9条を変えることである。それは今すぐに変えるという意味ではなく、現時点において変える必要があるという意味でもない。中国の人民解放軍が台湾侵攻するという事態が発生すれば、日本は憲法9条を維持できない。

おそらく、台湾政府は日本政府に対して助けを求めてくるだろう。それは韓国政府とはかなり異なる条件であり、台湾が日本に対して防衛援助を求めた際に、日本が無視するという選択肢は採れない。その際には、多くの国民も改憲に納得すると思うが、改憲のプロセスは時間が掛かり、その間に台湾が攻め落とされる可能性もある。とは言え、日本が超法規的に自衛隊を動かせるはずがなく、何があっても日本は憲法を遵守する必要があり、日本政府は憲法を越えるような権限を国民から与えられていない。

ただし、現状にはもう一つの方法があり、それは台湾侵攻が起こった際に、台湾を国として認めることである。台湾関係法の条項を読んだ限りでは、中国が台湾に侵攻すると、アメリカは台湾を国として認める可能性がかなり高い。そうなれば、日本も台湾を国として認めることでき、その条件下であれば、集団的自衛権の議論も可能になる。

このような外交的変更においても国会の承認は必要になるが、憲法改正よりは明らかに時間的に短くなる。昔はこの方法論がなかったが、今の制度であれば、このような方法も採れる。いずれにせよ、台湾が日本に助けを求めた際に、日本が何もしなくても良いという話にはならない。そして、それが分かっていても、日本は有事が起こってからしか、現状の変更はできない。

それは現状の変更が大きな国際的問題を起こすからであり、現時点において、米中関係が平和裏に進むという以外の前提を受け入れる必要性は全くない。

そして、それ以外に、日本も独自で防衛力を高めておく必要がある。日本が攻撃された際に、アメリカは日本側に立つだろうが、それがどのような形になるかは断定できない。アメリカはパールハーバーが攻撃された際には、そのまま日本を攻撃する態勢を整えたが、当時、アメリカの信託統治下にあったフィリピンが攻撃された際には、I shall returnと言って、一度撤退した。最終的にアメリカはレイテから戻って来たが、日本が攻撃された際にどのような行動を出るかは分からない。

Perl harbor momentか、I-shall-return momentか、これは未確定の問題であり、中国が嘉手納、普天間、自衛隊の那覇基地を一気に攻撃すると、情勢が一気に流動的になる。アメリカがどのような行動を取るかに関わらず、少なくとも、日本は自国を防衛する気概を持つしかない。そして、気概だけではどうしようもないので、ちゃんと準備しておく必要がある。

専守防衛の基本になっているのは、孫子の言う通り「故用兵之法、無恃其不來、恃吾有以待也。無恃其不攻、恃吾有所不可攻也」であり、日本は攻められないように準備をする必要がある。今のところ、日本の防衛強化はそれなりに進んでおり、水陸両用部隊、オスプレイ、与那国基地までは揃っており、ヘリ空母も追加供給される。

2010年前後に何度かまとめて安全保障について書いたが、その際には、ヘリ空母しかなく、その他の防衛力強化を当時も主張しており、基本的に、中国の軍備強大化までには間に合っている。当時から主張していることでまだ方向性が見えていないのは、海自の護衛隊群であり、南西方面に対する防備が依然として弱い。

護衛隊群を恒常的に南西におけるように海自の基地を設けるべきであり、その候補地は8つの港しかない。ベストの選択はホワイトビーチになるが、別にそこでなくても構わない。もう少し、機動的に展開できる位置に護衛隊群を一つ持ってくるべきである。

その当時議論していなかった問題として、軍法会議をどうするかという問題がある。現実問題として、憲法を改正しない限り、日本は軍事法廷を設けられない。一方で、憲法82条に基づけば、裁判自体を非公開にすることはできる。この問題での憲法改正は当面考えられないので、次善の措置として、軍法会議を非公開裁判にする方向で議論する必要がある。

まとめ

米中関係が今後どのようになっていくかは分からないが、両大国の間で、日本が積極的に出来ることはない。それは世界システム上の覇権争いであり、両国共に、そのような認識は持っている。

とは言え、アメリカと中国が戦争をすると決まったわけではない。現状の中国はそこまで望んでいないし、アメリカも実際の戦争まで始めたいとは思っていないはずである。日本もその前提で外交関係を進めるべきであり、あくまでも平和を希求することになる。それは憲法に書かれている精神でもある。

一方で、何らかの問題が起こった際には、日本はAllies側に立つべきである。間違っても、もう一度Axisを選択するようなことがあってはならない。ただし、それは何かが起こった際の問題であって、それはまでは日本は一つ中国という概念を堅持すべきである。それは中国の底線であり、それを越えれば、日本と中国は完全な敵対関係になってしまう。

そして、その前提の結果として、日本は台湾に対して一切の防衛協力をしないことになってしまう。中国が台湾を攻めないのであれば、日本が台湾防衛に関与する話は起きないはずであり、そう願うしかない。一方で、もし、そのような状況に変化が起きた際にも対応できるように、日本は準備をしておく必要がある。

一つの中国を前提とした上でも日本に準備できることはあり、その範囲内でできることを深化させて行くべきである。