「子供の自殺増加の背景」9・児童虐待の増加

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要点

  • 児相への通報が増えたのは家庭内暴力が増えたからである。
  • 通報が増えただけでなく、実際に虐待が増えている。

昔から家庭内の暴力はあり、児童虐待はあった。今の社会では、そういう行動が厳しく非難されるようになっており、家庭内の問題はより顕在化している。ただし、顕在化によって児相への通報が増えたわけでもない。

児童虐待伸び率

児童虐待に関して幾つかの統計値を上げているが、2008年スタートのデータと2009年スタートのデータが混在している。それはこちら側の利用した統計データの差であって、基本的には全く同じ児相への通報を元にした統計である。一般的に児童虐待という認識になるのは身体的虐待であり、家庭内暴力のイメージも身体的虐待であるが、現状では心理的虐待が突出して増えている。

児童虐待内訳

先ほどのグラフを構成比で作り直したものが以上のグラフになる。この図でも明らかなように、2009年においては身体的虐待が40%近くを占めており、児相への通報の最大であった。しかし、この10年間で状況は様変わりし、今では心理的虐待が半分以上を占めている。

では、どうしてこのような変化が起こったのかという点である。厚生省によると、心理的虐待は「言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティック・バイオレンス:DV)など」と定義されている。

ここ10年における児相への通報増加の大部分は警察からの通報である。つまり、警察からの通報の大部分が心理的虐待という意味である。そうなると、心理的虐待とは直接的に児童が暴力を受けなかったケースで、ドメスティック・バイオレンスとして家族が暴力を受け、それに警察が介入した案件が多いということになる。もし、その際に子供が暴力を受けていれば、身体的虐待となり、違うカテゴリーに入れられる。

現在、このような家庭内暴力が起こって警察が介入した際、警察は児童を保護するために児相に連絡する。これが徹底されるようになったため、警察からの児相への通報が増えている。

これが増加の全てであれば、児童への直接的な虐待が増えているようには見ない。一方で、構成比上は心理的虐待が増えているものの、他の虐待の種類も同様に増加している。それは警察からの通報を除いても児童虐待が増えているのと同じである。特に、近隣からの通報が増えており、それは心理的虐待のケースではないはずである。

つまり、テクニカルな問題で児相への通報が増えたという側面もあるが、警察を除いても通報は増えている。また、心理的虐待が増えているものの、それ以外の種類の虐待もやはり増加している。更に付け加えれば、この十年において児童数は大幅に減少している。これらを考慮すると、児童虐待の増加はかなり大きな問題である。

警察介入したケースの児童虐待増加の背景は分かっているが、それ以外のケースでどうして虐待の通報が増加したのかを次に考える。