「子供の自殺増加の背景」2・統計上の問題点

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要点

  • 自殺統計には限りがあるため、統計解析できるほどのデータ量がない。
  • 日本での子供の自殺増加は人口減少という社会的傾向に反している。

一般的に、統計データを分析するにはクロスチェックするのが最も単純な方法になる。二つの統計系列があって、そこに相関があれば、その二つは関連していると言える。データを解析するのであれば、基本的に多くのデータポイントが必要になる。感覚的には100以上の統計点が欲しいが、どれくらいあれば十分かは難しい問題である。

ただし、自殺統計のデータは確実に足らない。ある程度揃った統計系列は年一回20年分程度しかなく、社会的な相関をチェックするのに不十分である。過去を遡ってデータを作れないこともないが、それは自殺の全体数だけであり、細かい分析をするためのデータセットはそれほど過去へとは遡れない。

一方で、そこまでの解析を行わなくても、二つの統計データの傾向が同じであれば、その二つは関連があると言える。つまり、グラフや表を二つ並べるだけで良く、それで明らかな傾向が見えれば、統計値を数学的に解析する必要はない。

子供の自殺という問題に関して、最大の問題は自殺数が増えていることにある。なおかつ、人口比率という意味での子供の自殺率はもっと大きく増加している。子供の数が減っている中で自殺件数が増えており、それは自明の事実と言える。実は、これは大きな論点であり、子供に関するほとんどの統計は減少傾向にある。学校の数も減っていれば、先生一人あたりの子供の数も減っている。

このような状況下であれば、いろんなデータを集めてクロスチェックするというよりも、データ自体をじっくり観察した方が良いだろう。子供の自殺率と同じようにイレギュラーに増えている数値はあり、その中に関連を持った社会的要因があるはずである。

一方で、そのような単純観察だけであれば、偽の相関に嵌まってしまうかも知れない。つまり、この20年間で同じように増加しているデータがあれば、それが自殺を増加させている要因に見えるかも知れない。結局、データポイントが少ないために、通常の分析は行えず、その結果として、間違ったデータを参照してしまう可能性がある。

これらの問題を考慮すると、単にデータだけを扱うのではなく、子供の自殺の背景をもっと調べて、それらを把握した上で整合性を考えた方が良いだろう。と言うことで、次は、子供の自殺増加の直接的要因をデータに基づいて調べる。