「2019香港選挙」5・人口移動と選挙結果

boat on body of water
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要点

  • 人口増加地では北京派が善戦していた。
  • 中国から移入してきた非永住性居民は選挙権を持てないため、人口増加地に引っ越した香港居民が北京派を支援していた。

地図を見た最初の印象では新興住宅地で北京派が勝っているように見えたが、それだけでは分析としては不確かさが残る。そこで香港の統計情報をいろいろ調べていると、地域別の人口推移のデータを見付けた。新興住宅地と人口増加は関連しているため、人口推移を元に最初の仮説が正しいかをダブルチェックしてみる。

香港人口

まず、このグラフの見方としては、人口は十万人単位で表されている。つまり、左上の香港島中西区であれば、2012年の時点で25万3千人の人口がいた。香港の行政区は上から下まで全て区になるので、多少の混乱が生じる。一番上は香港特別行政区であり、下の行政単位も中西区のようになる。

ちなみに、中西区の中には半山区、中環区、上環区等があり、更に混乱してくる。この最下層の区は区議会の単位ではなく、区議会は中西区に一つとなる。ちなみに、その上のエリア区分である香港島には行政区は設定されていない。要するに、香港特別行政区に立法会があり、中西区に区議会があり、それが公式な行政単位になる。

この表にある通り、区議会は4つのエリアに分けて表示されており、それぞれ香港島、九龍、そして中国国境沿いの新界と離島エリアになる。実数値の下にあるパーセント表示が人口の変化率で、黄色と緑色でハイライトしている場所は北京派が善戦した区議会である。このままだと分かり難いので、人口増加順にこの区を並べ直すと以下のようになる。

選挙X人口

この表の黄色くハイライトしている場所が北京派の善戦していたエリアである。悩む必要もないほどに明らかだが、北京派は人口増加地で善戦していた。つまり、新興住宅地で北京派が優勢であったというのは正しい分析になる。

香港の人口増加には複数の意味があり、ここに示す人口増加は香港住民全体の人口増加を意味している。つまり、この数字は香港の有権者の増加とは必ずしも一致しない。外国人が増えても香港の選挙には参加できないため、そのような増加は何の影響も与えない。

ただし、北京派が強かった人口増加地は外国人が多く住んでいるエリアではないため、やはり、香港人の人口が増加しているエリアで北京派が強かった。このような人口増加地には中国本土から来る住民も増えているはずだが、中国本土の住民が香港で投票権を持てることはない。つまり、そのような人口増加影響も選挙結果から排除できる。

中国の戸籍制度は固定的であり、現状の制度下で戸籍を中国から香港に移し替えられるとは思えない。現実的にどのようになっているかは分からないが、香港返還以前のように、本土から逃げて来て香港居民になるのは不可能のはずである。

香港の男性が大陸の女性と結婚することはあるが、それでも戸籍は固定的なままである。もちろん、その結果として、その男性がより北京派になることはあり得る。しかし、そのような環境がマジョリティではなく、選挙結果を変えるほどのインパクトはない。

では、どうして新興住宅地を中心に北京派が善戦することができたのか?