
要点
- 北京派の支持層は特定のデモグラフィックの可能性が高く、おそらく、30-40代の年齢層である。
- 逆に言うと、高齢層と若年層では民主派が強いことになる。
- 香港の現状状態が続けば、北京派は更に弱体化していく可能性が高い。
2019年選挙において、民主派が約6割、北京派が約4割の得票率であった。その前の選挙においては、この数字が丁度逆転しており、真ん中にスウィングボーターがいると一般的には判断できる。
一方で、投票率が倍増したというのは民主派の多くが現状に危機を感じて選挙に行ったという意味でもあり、また、その状況に対応するために北京派も選挙に行ったということである。つまり、今回の選挙は潜在的な支持者を掘り起こしただけで、真ん中のスウィング層はそれほど大きくないのかも知れない。潜在的には元から民主派の支持者が多く、それが表面に出て来ただけかも知れない。
それ以上に重要な事実は、今回の選挙結果にはデモグラフィックな影響が出ている可能性が高いことである。北京派が新興住宅地で強かったというのは、その住民に北京派が多かったという意味である。それらの住宅に住んでいるのは30-40代の夫婦が多いはずであり、彼らの北京派支持は歴史的背景から紐解ける。
香港が返還されるのは1997年であり、その直前には中国の統治下になる不安が強く、多くの住民が香港から逃げていった。しかし、実際には大きな混乱は起こらず、中国の経済発展と共に、香港も発展していった。このメリットを受けた世代こそが30-40代であり、その層が新興住宅地に住んでいる。
選挙結果が物語っているのは、彼らが依然として香港返還後の状況を支持しているということである。それと同時に、それ以外の層では民主派が圧倒的に優勢になっているはずである。
特に、若者は圧倒的に民主派だと思う。それは現状において、香港におけるデモの中心が若者だからであるが、それと同時に、彼らの上には2014年の雨傘運動からアクティブだった世代もいる。つまり、20代以下において、北京派支持は壊滅的に少ないはずである。
ただし、若者の支持だけであれば今回のような一方的な選挙結果にはならない。それは雨傘運動後の2015年香港区議会選挙で、民主が惨敗したところにも現れている。今回の選挙結果の別側面は人口減少地で民主派が圧勝していたことである。つまり、高齢層も民主派を支持しているということになる。
香港の闘争がこのまま続けば民主派は更に拡大して行き、北京派は更に弱体化して行くだろう。そして、香港の政情は更に不安定化していく。行政が抑圧を強化しても、この状況は変わることはない。それよりも、この選挙結果を踏まえると中国は香港政策をもう少し柔軟に変化させる必要がある。
中国風に言うと、基層の中に入っていく必要があり、香港の若者の意見に耳を傾け、不安を和らげる必要があるだろう。