
要点
- 中国では古典として、古い漢籍が勉強されている。
- 中国の古典教育は日本の漢文教育とは違うものである。
当たり前の話かも知れないが、中国でも漢文を勉強する。中国では国語教育は語文と呼ばれており、古い漢籍に関する勉強もその課程の中に含まれている。
普通高中语文课程标准(2017年版)が現在の中国語文教育の指針であり、その詳細についてはWIKIでも説明されている。ただし、以下のリンクは中国語で書かれている。
この語文課程標準は高校生までの学習内容を網羅しており、学習する内容ごとに学習任務群として分類されている。語文は18課程に分かれており、その中で古典に関するものが二つある。それが以下の二つである。
- 学习任务群8 中华传统文化经典研习
- 学习任务群14 中华传统文化专题研讨
おそらく、このままでも読めると思うが、任務群8が「中華伝統文化経典研習」で、任務群14が「中華伝統文化専題検討」である。18ある学習任務群の学習時間は平均的に分散しているわけではないが、2/18課程、つまり、古典に対して10%強の時間が割り当てられている。
この二つの任務群には微妙の差が存在する。前者の任務群8は伝統文化経典を読むことが目標になっている。つまり、古典の代表作に触れることを目的としており、その内容はおそらく史書、四書、漢詩を指している。日本の古文を想像すれば分かる通り、現代中国語と漢文では微妙に語法が違うため、古い典籍を理解するためには註釈が必要になる。その註釈を含めて勉強するのが任務群8の目的である。
一方で、後者の任務群14は中国文化を学習することが目標になっている。つまり、中国文化が主にあり、それに合うような古典の書籍を読むところに目標がある。ここに重要な論点がある。
日本の漢文教育にはここまでの機能がない。江戸時代以前においては、中国から知識を吸収するために古い典籍はしっかり読まれていた。つまり、四書や史書の原文から知識を吸収していた。しかし、この点において現代では漢文を勉強する必要がない。それは儒教を勉強する必要がないということでもあるが、同時に、思想的なものであれば現代文でも十分に学べるからでもある。
中国においても典籍の知識を吸収するためだけであれば、現代文訳を読めば良く、古典の原点を読む必要はない。特に、現代中国において過去の伝統思想は必ずしも支配的ではない。しかし、依然として、儒教や道教も含めて中国的な伝統的な考え方は綿々と続いている。その中国文化を継承するために古典教育が行われている。
日本でも、ある種、同様の側面があり、日本の古文教育は単に古典の書籍に親しむだけでなく、古くからの日本的感性を引き継ぐ作用も持っている