「大麻合法化について」1・それでも違法ドラッグは減らない

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要点

  • ソフトドラッグを合法化してもハードドラッグが増え、違法ドラッグは減らない。
  • 危険なドラッグ使用が増えるため、地下経済は依然として潤い、社会不安は高まる。

 

ソフトドラッグ、特に大麻を合法化しようという意見は常にあり、最近でもその主張を良く目にする。その主張の中にソフトドラッグの合法化は違法ドラッグを減らすというロジックがあり、WIKIにも確かにそのような記述がある。いずれその記載も変わるかも知れないが、ハードドラッグが増えるという反対意見の存在を述べた上で、現実的には増えていないとしてEUとオランダのデータが載せられている。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%80%E3%81%AE%E8%96%AC%E7%89%A9%E6%94%BF%E7%AD%96

ただし、論拠として挙げられているデータは古い上に、ハードドラッグとしてコカインしか採り上げていないため、実際にはかなり信憑性に欠ける議論である。そこで、実際のデータを当たって、ソフトドラッグ合法化とハードドラッグの関係を考えて見る。EUにおけるドラッグ調査の最新統計は以下のリンク先にある。

http://www.emcdda.europa.eu/data/stats2019/gps

WIKIのデータもおそらく元々はこのデータセットから抜き出しているように見える。この中から、まずはアンフェタミンの使用量を採り上げる。

amphetamines

アンフェタミンとは合成ドラッグの一種で、その歴史は長い。例えば、一番有名な探偵小説の主人公であるシャーロック・ホームズはアンフェタミンを使用している。つまり、それくらい前からアンフェタミンは利用されていた。

使用の歴史が長いというのは非合法化の歴史も長いということでもある。アンフェタミンが違法ドラッグとして禁止されるようになると、ドラッグの精製者はアンフェタミンのデリバティブを作り、同じような効用が生み出せる商品を作った。それはアンフェタミンを含んでいるものの化学式的にアンフェタミンではないため、作成当初は合法という扱いになり、やがて時間と共に、その新しい化学式が規制対象のドラッグとなる。

そのようないたちごっこの歴史が続けられており、現在一番有名なアンフェタミンデリバティブがMDMAである。当初、このアンフェタミンは全てMDMAのことを指しているのかと思っていたが、エクスタシーが別立て記載されているので調べ直した。

それで分かったのは、どうやらヨーロッパ一部地域では旧来のアンフェタミンも流行っているようである。つまり、この図にあるアンフェタミンはMDMA以外のアンフェタミン系を意味しており、もちろん危険なハードドラッグである。そして、図にある通り、Netherlands、つまりオランダで最も使用されている。

オランダはソフトドラッグである大麻が合法化されている国である。つまり、ソフトドラッグが合法化されても、ハードドラッグの使用が増え、ドラッグの問題が解決されることはない。と言うよりも、ハードドラッグは社会的にも身体的にもより危険であり、数字だけ見ると、ソフトドラッグの合法化はドラッグ問題の解決には繋がっていない。

WIKIの説明では、ハードドラッグとしてのコカイン使用が増えないと主張しているが、そちらのグラフも載せておく。

cocaines

こちらではオランダでの使用量はイギリス・スペインに次ぐ3番目でしかないが、使用比率が高いことには変わりがない。このコカインだけを取り出して、ソフトドラッグを合法化してもハードドラッグの問題が起きないと主張するのは、単なるデマと変わらないレベルである。実際には、デマというよりも政治的主張を伴う虚偽説明の可能性があり、そうであれば、もっと悪質である。