「外国人献金賄賂問題」6・国家公務員の地位に関するあっせん利得の量刑

abundance bank banking banknotes

要点

  • 日本の公務員が地位に基づくあっせんを行って利得を得ても犯罪には該当しない。
  • ただし、地位に基づくあっせん利得は国家公務員倫理法で禁止されており、公務員が当該行為を行うと怒られる。犯罪にはならない。

日本人から外国公務員への賄賂規制は不正競争防止法18条で決まっているが、これに全く対になる法律は日本にはない。ただし、日本では公務員の収賄は犯罪になり、その贈賄側が日本人であっても、外国人であっても同様の犯罪になる。問題は地位による贈収賄をどう考えるかである。権限がある場合は贈収賄に該当するが、地位に基づくあっせんに対してはどのような法規制が掛かっているかがここでもテーマである。

そもそも、日本の国家公務員は国家公務員法第103条において兼業が禁止されている。ただし、規制が緩くなったので、一部の兼業は可能になっている。つまり、農業でも出来れば、ユーチューバーにはなれる。民間企業で働いたりは出来ないが、講演を行って、それに見合う報酬を得ることはできる。これだと誰からでもお金を得られることになるが、利害関係者からの贈与等を受けるのは禁止になっている。それは国家公務員倫理法第5条で決められている。

第五条 内閣は、第三条に掲げる倫理原則を踏まえ、職員の職務に係る倫理の保持を図るために必要な事項に関する政令(以下「国家公務員倫理規程」という。)を定めるものとする。この場合において、国家公務員倫理規程には、職員の職務に利害関係を有する者からの贈与等の禁止及び制限等職員の職務に利害関係を有する者との接触その他国民の疑惑や不信を招くような行為の防止に関し職員の遵守すべき事項が含まれていなければならない。

 

この規定は利害関係を有する者との接触に際しての倫理を規定している。つまり、これは地位に基づく問題ではなく、権限に基づく贈与等を禁止している。一方で、地位に基づく贈与等に関しては同じく国家公務員倫理法第6条で規制されている。

第六条 本省課長補佐級以上の職員は、事業者等から、金銭、物品その他の財産上の利益の供与若しくは供応接待(以下「贈与等」という。)を受けたとき又は事業者等と職員の職務との関係に基づいて提供する人的役務に対する報酬として国家公務員倫理規程で定める報酬の支払を受けたとき(当該贈与等を受けた時又は当該報酬の支払を受けた時において本省課長補佐級以上の職員であった場合に限り、かつ、当該贈与等により受けた利益又は当該支払を受けた報酬の価額が一件につき五千円を超える場合に限る。)は、一月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで及び十月から十二月までの各区分による期間(以下「四半期」という。)ごとに、次に掲げる事項を記載した贈与等報告書を、当該四半期の翌四半期の初日から十四日以内に、各省各庁の長等(各省各庁の長及び行政執行法人の長をいう。以下同じ。)又はその委任を受けた者に提出しなければならない。

 

つまり、ここでは地位として本省課長補佐級以上と規定しており、該当者は一定金額以上の利益供与を受けた場合に報告する義務がある。これが丁度、不正競争防止法第18条の外国公務員への地位に基づく規定の対にはなる。そして、対象者が外国人だけではなく、日本人も含んでいるという点において幅広い規制になっている。

しかし、この条項には刑罰の規定がない。つまり、規制はされているものの違反をしても犯罪にはならない。もちろん、行政機関の職員に関する規定であるため、違反行為があれば行政的な処分は受ける。問題が深刻であれば、懲戒になるだろう。とは言え、どれだけ深刻になっても刑事罰は受けない。

外国人公務員に賄賂を渡して、地位に基づくあっせんをしてもらうと不正競争防止法第18条の違反になり、五年以下の懲役刑になる。一方で、日本の公務員が外国人からお金を貰って、自らの地位を使って担当者を紹介したりしても犯罪にはならない。倫理規定に違反しているため怒られるが、それだけである。

一般的に贈収賄において、収賄の方が贈賄よりも重い罪になる。ここにおいても、法の平衡性は著しく破綻している。結局、日本の法概念の中に地位に基づくあっせんという概念が存在するのだから、収賄側の日本の公務員に関しても地位に基づくあっせん利得が犯罪になるように規定するしかない。