要点
- 統計上、いじめは子供の自殺の主たる要因とされていないが、実際にはいじめこそが学校要因による自殺の根源である。
- 現状ではいじめが増加しており、それが子供の自殺の増加に繋がっている。
子供の自殺原因は精神疾患、親子関係の不和、いじめの順に多いはずであり、これだけで過半を占めている。このうち、いじめによる自殺というのは統計上極めて過小評価されている。それはいじめによって直接的に自殺が起こらない限りいじめと分類されないからであり、また、自殺後の調査において人的要因を避ける傾向が存在するからである。
結果として、学校要因による自殺の7割超が学業要因になっており、それは別の調査とクロスチェックした結果、事実ではない。統計の取り方に大いなる問題があり、自殺統計は改善される必要がある。
子供の自殺は増加しており、それと同じように、いじめも増加している。一般論として、いじめの増加の背景には学校がいじめの認知方法を変えたという主張がある。そういう効果が存在することは事実であるものの、その効果を除いても、いじめは増え続けている。この二つ、いじめの増加と子供の自殺の増加は繋がっている。
つまり、子供の自殺を減らすためには、いじめが深刻になる前に抑える必要があり、いじめを早期に認知する必要がある。
この際に、教師の発見能力に期待するのは危険である。実際の所、教師はほぼいじめに気づいておらず、いじめが彼らの知らない所で行われるため仕方がないという側面もある。もちろん、それ以上の側面もあるが、いずれにせよ、教師がいじめを発見できるという期待を持つべきではないし、教師本人も自分の能力に過剰な自信を持つべきではない。
現実的には、いじめはいじめられた本人が申告することによって発見されており、早期発見するためには、より容易にいじめを申告できる機会を作るべきである。その際において、生徒に対するアンケートがよく機能している。つまり、間接的にいじめを訴える機会を作ることで、学校はより早期にいじめを把握できるようになる。
現状においては、いじめは増え続けており、どのように抑制すれば良いか分からない状態である。また、発生後の対応に関しても統計上は疑問を感じる。いじめ発生後の対応は別室指導や校長・教頭の指導が大部分を占めており、果たして、そのようなものがどれほどの効果を持っているのがよく分からない。
重大事態調査という形で深刻ないじめの実態が調査されるようになっているが、それと同時に、生徒に対してどのような指導をするのが効果的かも調べ直した方が良いのではないだろうか。また、重大事態の件に関しても、現状では調べただけになっているように見えるため、横断的に重大事態をまとめて、いじめを防止する方策を考える必要がある。