要点
- 台湾では老人福祉施設の防疫を強化するために、施設運営者・従業員・利用者向けにリーフレットを用意している。
- どこの老人福祉施設でもそもそも一般的な疾病対策はなされているはずであり、新型コロナウイルスで追加的に実施することはそんなに多くない。
- 台湾での施策を鑑みるに、老人福祉施設内における導線の区分化と従業員・来訪者の検温は施設全体の感染リスクを下げられるはずである。
5月6日に現在よりも防疫態勢が下げられた際、日本はどのような対策を実行していくのかという点に関して幾つかの論点がある。これまでの政府の対応の中で、どのような場所で感染が起こっているかはかなり分かってきており、それに対して、今後、どのように対策を立てるかがポイントになって行く。その中では夜の街をどうするかという問題と、院内感染にどう取り組むかは重要課題になる。
日本の被害を減らすという観点に立てば、院内感染と共に重要な柱になるのが老人福祉施設をどうやって防護するかという点である。高齢者の新型コロナウイルスに対する致死率は高く、逆に言うと、老人福祉施設を防護できれば、日本全体の死亡者を減らすことが出来る。
この感染症に対する防疫という観点では日本よりも台湾の方が上手く行っているため、台湾の対策が日本に適用できるかどうかを考えたい。台湾の衛生福利部は老人福祉施設向けにリーフレットを出しており、そこに基礎的な防疫対策が書かれている。
https://chnh.mohw.gov.tw/home.aspx
この中では老人福祉施設対策として9つの項目が挙げられている。ただし、そのほとんどは日本の施設でも実施されている内容であり、それ全体を取り上げても基本的に新しい話はない。そこで、全体の対策を議論するよりも、おそらく日本では採られていないポイントを採り上げたい。
その一つが導線の区分化である。例えば、食堂で施設利用者全員が集まる際に導線を分離しておく。おそらく、この措置は日本では行われていないと思う。利用者の導線を分けることのメリットは施設内で感染が起こった際に、一気に感染が全体に広がることを防ぐ点にある。導線が一つになっていると、より多くの人が感染する可能性が高まる。
それと同時に、台湾では活動自体も分散することを推奨している。つまり、何かをやるにしても施設利用者のグループ分けを強化し、なるべく一気に感染が広がることを避けるようにしている。
次に、職員に関する問題である。台湾のリーフレットでは職員向けにも多くのポイントが書かれており、その中でも検温は重要なポイントのように感じた。マスク、手洗い、消毒等は日本でも普通にしているはずだが、一方で、職員の検温は一般的ではないと思う。老人福祉施設では利用者の検温はしていても、新型コロナウイルスは職員からも感染する恐れがあり、職員が毎日検温し、少しでも発熱があれば休むようにする必要がある。
この検温自体は施設の入り口でも実施できる。つまり、業者を含む、施設への来訪者に対して非接触型の検温器で検温することで、施設内へのウイルス侵入リスクを下げられる。
これに加えて、そもそもリーフレットを作成することは重要だろう。老人福祉施設運営における基礎的な疾病対策と、新型コロナウイルス対策のための追加的な部分を一つのリーフレットに収めておくことで、施設の方が最低限にやるべきことを把握できる。この簡便さが老人福祉施設のリスクを下げるのに役立つだろう。
複雑なものであったり、極めて長い文章で構成されているようなものでは全体を理解するのに時間が掛かり、結局、何も出来ないという結果に陥りかねない。そのために、ある程度簡便なリーフレットを用意し、施設の従業員の理解を深めることは重要になる。