「新型肺炎・対策再精査」3・都市封鎖

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  • 日本では武漢封鎖のような完全な都市封鎖は法律上認められていない。
  • 感染症対策として物理的な都市封鎖が効果を発揮する場合があり、日本も法規定を作った方が良い。
  • インフル特措法を改正して、緊急事態宣言下で交通規制の規定を入れるのが最適だと思われる。
  • 全国一律の行動規制よりも一部地域の交通遮断の方が合理的な政策である。

 

日本は新型コロナウイルス対策として都市封鎖政策を実施していない。ここで言う都市封鎖とは完全な封鎖を指しており、パニック映画で出てくるような銃を持った軍人が道路に立って街の出入りを封鎖している状態を意味している。今回の感染の発生源となった武漢では、この完全な都市封鎖が実行されていた。電車は停止し、飛行機も止まり、高速道路を含めて他都市へと続く道は全て封鎖された。物流ですら大幅に制限されており、武漢に物資を運び入れる全てのトラックは道路ブロックを設けて検閲されていた。そして、武漢内部と外部ではドライバーが交代し、トラック自体も出入り時に消毒が行われていた。都市内部でも移動が基本的に禁止されており、施設によっては完全に外出禁止の場所もあった。都市封鎖時の武漢は以下のドローン撮影のような感じであり、これに加えて、武漢の出入り口が行政によって封鎖されていた。

https://www.youtube.com/watch?v=gNFeo5oOuJA

日本ではここまでの対策が必要にならなかったが、日本では武漢の都市封鎖のような政策が採れるのというのが論点である。日本人からすると小さな街であれば封鎖するというイメージも湧くかも知れないが、東京ほどの大きさの都市になると封鎖というイメージは湧かないかも知れない。しかし、中国が封鎖した武漢市は小さな街ではない。大きさ的には兵庫県と同じくらいであり、人口は1千万人を超えて東京都クラスの規模にある。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A6%E6%BC%A2%E5%B8%82

そういう意味では、都市封鎖できるかという問いは東京都を封鎖できるかという意味でもある。今後、新たな感染症が起こった際に東京都を封鎖できるのか、あるいは、新型コロナウイルスの第二波があった時に東京都だけを封鎖できるのかという問題である。

 

物理的には東京都は封鎖できる。電車は東京都の手前までの折り返し運転が出来るので、東京都だけを封鎖することは可能である。船舶や飛行機ももちろん止められる。問題があるとすれば道路になるが、東京都に関しては川で仕切られているため、神奈川と千葉へのアクセスは橋を抑えれば止められる。一方で、埼玉西部、荒川の西側の地域に関しては東京都と一体化しているため遮断するのは難しい。ただし、その地域を除けば埼玉との間も遮断することは可能である。つまり、物理的には東京都と埼玉西部は遮断できる。東京都を通過する物流だけを維持したいのであれば、高速道路の一部だけを動かしてゲートを封鎖すれば良い。東京都に入る物流はポイントで検疫を行えば良いので不可能ではない。同じ人口規模でもっと面積の広い武漢が封鎖できたのだから、東京を封鎖すること自体は不可能ではない。

ただし、法律的に封鎖できるかとなると話が変わってくる。感染症法33条には道路封鎖の規定があり、それは以下のようになっている。

「都道府県知事は、一類感染症のまん延を防止するため緊急の必要があると認める場合であって、消毒により難いときは、政令で定める基準に従い、七十二時間以内の期間を定めて、当該感染症の患者がいる場所その他当該感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある場所の交通を制限し、又は遮断することができる。」

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=410AC0000000114

このように、感染症法は消毒により難い場合に交通遮断を認めている。この「消毒により難い」とは消毒によって感染が抑えられない時を意味している。つまり、新型コロナウイルスに関しても感染症法33条に基づいて交通遮断はできる。しかし、その遮断期間は72時間、つまり3日以内となっている。武漢の都市封鎖は76日間続いており、現在の感染症法では想定されている期間を遙かに超えている。

現在の緊急事態宣言はインフル特措法に基づいているが、こちらの法律にも交通遮断の規定はない。政府はこの法律に基づく対処方針として新型インフルエンザ等対策ガイドラインを設けており、それを読み直しても交通遮断の項目はなかった。と言うよりも、交通は維持するという方針になっており、遮断は一切想定されていない。それは都市封鎖を行うと経済や生活への影響が大きすぎるからだと思われる。

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/keikaku/pdf/h300621gl_guideline.pdf

つまり、道路や交通は物理的に遮断できるものの、実際に実行するためには法律を変える必要がある。それは感染症法かインフル特措法の改正を指しており、その改正がない状態での交通遮断は法治国家の原則から逸脱する。

 

問題は、そもそも都市封鎖が必要なのかという点にある。武漢のロックダウンに関しては、確実に効果があった。それは武漢内部で新型コロナウイルス感染症を抑えられたということではなく、武漢に人を閉じ込めることによって、他の都市への感染の拡大をかなり抑えられた。特に、武漢封鎖は春節休暇の前日から始まっており、武漢を通じた人の移動を抑えることで感染をかなり抑制できたことは間違いない。このように、中国が一気に封鎖できたのはSARSの経験によるものだと思う。感染を止めるためには、感染地域からの人の移動を抑える必要があり、それは中国政府がSARS禍から学んだ教訓であった。

幸運にして、今回、日本は武漢のような完全な都市封鎖に追い込まれるようなことはなかった。一方で、一部地域で感染が拡大した結果、緊急事態宣言が日本全国に拡大され、感染が蔓延していない地域でもかなりの強度の行動自粛が求められるようになった。

ここで問題になるのが、果たして、全国一律に緊急事態宣言を実施する必要があったのかという点になる。例えば、第二波、第三波として東京だけで感染爆発が起こった際に、果たして、もう一度、日本全国に緊急事態宣言を出す必要があるのかという話である。そもそも、緊急事態宣言が全国に拡大したのは都市部で緊急事態宣言が出された結果、それ以外の地域に流れてくる人が増えたからだと説明されている。そうであるならば、経済のコストを考えると東京だけを封鎖した方が良いかも知れない。東京は日本の中心であるため、東京が封鎖されると経済的にはいろいろ不利益が生じるが、一方で、日本の大部分の人は過度の自粛を求められることはない。つまり、日本全体に生活の縮小を求めるくらいであれば、一定地域だけを封鎖した方が良い。それが東京であれば、東京だけを封鎖すれば良い。

そのような一部地域の都市封鎖を可能にするためには法律を整備する必要がある。基本的には、感染症法かインフル特措法の改正になり、緊急事態宣言下で交通の遮断を認める方が分かりやすい。交通の遮断となると国土交通省の管轄になり、実際の道路遮断は警察が実施することになるだろう。そういうことであれば、道路の遮断自体は道路交通法でも追加できる。実際の所、インフル特措法に基づいて民間機関に対しても指示を出せることになっており、道路以外の交通であれば現実的に遮断できる。つまり、道路だけを別の形で遮断するという方法論も取れる。しかし、道路交通法の中に交通遮断の規定を入れると、感染症とは関係のない局面で長期間の道路封鎖が可能になってしまうため問題がある。

交通遮断を導入するにしても要件を限定しておかなければ、将来においてどのような形で制度が使用されるか分からない。あるいは、法律の中に交通遮断を出来るという規定を入れてしまうと、それだけで不必要にその権限が行使される場合もある。これは難しい問題である。確かに、権限があるから使うというケースもあるだろうし、悪用される危険性も十分に考えられるが、一方で、交通遮断するルールが全くないというのも問題だろう。

例えば、その封鎖は東京という広い地域ではなく、もう少し狭い地域の場合もあるかも知れない。例えば、歌舞伎町だけを封鎖するとかのイメージである。新しい感染症が起こった際にマンションやビル単位ではなく、街レベルで封鎖する必要が生じるかも知れない。その場合はどうしても交通を遮断する必要があり、その際に、感染症法が認めている3日以上の遮断が必要な場合もあるだろう。そのためには交通遮断の規定を見直す必要がある。

 

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