PCR検査機の進化

dna-1811955_1920

  • 簡易PCR検査は、必ずしも精度のより低い検査ではない。
  • 最新のPCR検査機は最新であるがゆえに、医療用の承認を得ていないケースがある。
  • それらの機械は医療用以外で使用されている。

人間の判断において、短時間でパッと判断するよりも、時間を掛けてじっくり掛けて判断する方が精度は高まる。あるいは、少ない情報で判断するよりも、より多くの情報で判断する方がより正しい答えに近づける可能性は高い。

一般的な機械においてもそれは当てはまり、例えば簡易に検査できる機械、つまり、短時間で検査できる機械は時間を掛けて判別する機械よりも精度の点について劣るように感じる。時間と精度にトレードオフがあるというのは、経験的認識として正しいように感じられる。ただし、現在時点のPCR検査機に関して、そのような経験知が当てはまるとは限らない。

当たり前の話だが、複数のメーカーがPCR検査機を作っており、それぞれにおいて性能が異なる。これらの性能を一般的に判断する上において、簡易に検査できる機械、つまり、短時間で検査ができるものはより精度が低いという誤解がある。

PCR機械は時間と共に進化しており、その進化は基本的に二つの方向性に向かっている。一つはより少量の検体で検査する方向性であり、もう一つがより短時間に検査する方向性である。

これの方向性を目指す上において重要なポイントとなるのがPCRという検査方法の本質的特徴である。PCRは元々少量の検体を増幅させて、DNAを調べる機械である。機械の感度が上がると、増幅させる量を減らすことができる。感度が上がるという意味においては光学的な側面を含めた機械的な方向性と、ソフト的な問題があるが、いずれにせよ、物理的な感度が上がれば誤検知も減少する。

ここにパラドキシカルな認識状況が生まれる。つまり、より優れたPCR機械は少量の検体で短時間検査を行い、誤検知が減るという状況である。一般的には、これらが反比例する関係のように見えるが、実際には機械の精度が上がれば、これら全てが同時に達成される。

つまり、短時間で検査できる機械の多くは優れていると言うことである。あるいは、機械が進化すれば、短時間で検査できるようになる。だから、PCR検査が短時間で終わるのは悪い事ではない。それは機械の精度が高いため、増幅の過程を短縮させられているという意味でもある。

問題は、これらの最新の機械が医療用には利用されていない点にある。

薬と同じように、医療機器も医療使用に際しては承認を受ける必要がある。PMDAがその認証を行っており、それは医療においては一般的なプロセスである。しかし、プロセスに時間が掛かる結果として、最新のPCR機械は医療に利用できない。あるいは、医療機関が利用しているのは基本的に古い機械であり、だから、PCR検査に時間が掛かる。

ここには2つの問題があり、1つは承認プロセス自体に時間が掛かることである。PMDAもこの問題を把握しており、承認プロセスの短縮化を目標に掲げている。もう1つの問題が臨床性能試験の長さの問題である。体外で使用する機器とは言え、医療用であるため臨床性能試験に時間が掛かることは理解できる。一方で、機械の大幅な更新や性能追加があった際にも、同様の臨床性能試験が求められる。

この後者に問題があり、例えば検査キットの場合、試薬の承認範囲を拡大する際に、また最初から臨床性能試験が求められることになる。一方で、アメリカでは承認追加の際に臨床性能試験から求められないために、より早く上市できるようになる。そうなると、日本のメーカーには競争上不利益が生じる。

このような結果として、リアルタイムPCR検査機のうち、最新の物はほぼ承認を受けていない。あるいは、小型の機械も承認を受けていない。これらの機械の中には15-30分くらいで検査結果を出せる物もある。これらを使うと、検査キャパシティは一気に拡大する。

これらのPMDAの承認プロセスのあり方については議論がなされているため、そのうち変更されると思う。ただし、今回のコロナウイルスに間に合うことはない。

今回のコロナウイルスに絞って議論すると、実は、日本の最先端機械を利用できる可能性はある。これらの機械は医療用としてまだ承認されていないだけであって、日本の研究所には導入されている。これらも利用すれば、より短時間に検査が出来るようになる。厚労省が説明している6000や8000というキャパシティの中にはこれらが含まれていると思われるが、詳細の説明がないので、国が実際にどのような計算をしているか分からない。

繰り返しになるが、これらPCRC検査機の一部は医療機器としての承認を受けていない。そうなると、説明として簡易PCR検査になるはずである。それは医療用の承認を受けていないという意味であって、必ずしも、精度が低いという意味ではない。どちらかと言うと、簡易PCR検査の中にはより精度の高い物が含まれている。

承認プロセスの変更にはまだ時間が掛かるだろうが、実際の機械は使用でき、また新たな機械を導入するのであれば、どう考えても、まだ医療未承認の最先端機械の方が良いと思う。それらの方が圧倒的に検査スピードは速く、精度も劣っているわけではない。

念のためであるが、コロナウイルスの簡易検査キットは簡易PCR検査とは別物である。

 

Leave a Reply

Fill in your details below or click an icon to log in:

WordPress.com Logo

You are commenting using your WordPress.com account. Log Out /  Change )

Facebook photo

You are commenting using your Facebook account. Log Out /  Change )

Connecting to %s

%d bloggers like this: