「新型肺炎対策初動評価」2・医者の意見が反映され難い

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要点

  • 現在の新型肺炎対策では最終決定に医者の視点が入りにくくなっている。
  • 専門家会議の設置は医療的意見の反映には繋がるが、専門家会議のメンバーも対策本部幹事会に入れるべきである。

新型肺炎対策は新型コロナウイルス感染症対策本部幹事会で本質的な議論がなされているが、その議長である沖田芳樹内閣危機管理監も安倍首相も医療の専門家ではない。それ以上に、沖田内閣危機管理監は警察官僚であり、社会保障行政の専門家でもない。彼らはその状況下で最終決定を下す必要があるが、基本的に、彼らが医者である必要性はない。医者が意思決定をすれば正しい答えが出るわけでもなく、ちゃんとした情報があれば、適切な意思決定が出来るはずである。

問題は対策本部や対策本部幹事会にどのような情報が上がってくるかである。あるいは、意思決定する際に、どのような補助があるかである。まず、そもそも、対策本部幹事会に医者はいるのかという問題である。対策本部幹事会は総合調整する場所ではあるが、同時に、医療的な観点からのインプットが必要になる場合もある。別の言い方をすると、各省から上がって来た施策は幹事会に参加している医者によってダブルチェックされた方が政策の精度が上がるようになる。

実際に、幹事会には医者が参加している。そのうちの1人は副議長の厚生労働省医務技監・鈴木康裕氏である。ただし、鈴木氏は医学部卒業と同時に厚労省に入っているため、医者ではあるが、臨床経験はない。ずっと厚労省の技官であるため、医療のプロではあるものの、現場の医者とは違う感覚を持っている可能性が高い。

前回に書いたように幹事会には多くの名前が載っているが、参加している医者は彼ともう一人しかいない。それは厚生労働省大臣官房審議官(危機管理、科学技術・イノベーション、国際 調整、がん対策、国立高度専門医療研究センター担当)の大坪寛子氏である。結局、幹事会の中で議論をリードできる医者は大坪氏だけであり、その場で医療的な議論になると大坪氏に多くを依存する可能性がある。

これだと決定システムは極めて脆弱なものになる。大坪氏の知見如何に関わらず、複眼的な視点からのインプットが得られず、属人的な決定に陥る危険性がある。

これを避けるための方策の一つが専門家の意見を取り入れられるような組織を作ることで、現在では専門家会議を設けることが決まっている。ただし、これでもまだ不十分である。確かに、専門家会議を作れば、医療の現場からの意見を入れられるようになるが、一方で、彼らを幹事会に入れなければ、そもそもの決定システムの脆弱性を補えない。

要するに、対策本部幹事会の議長が内閣危機管理監でも良いが、彼が直接的に複数の医者からのアドバイスを貰えるようにする必要がある。この二つを分けてしまうと、対策本部幹事会は専門家会議を無視するか、あるいは、全ての意見を受け入れるかのいずれかになってしまう。それだと脆弱性が別の部分に移転しただけで、そもそもの解決にはならない。そのため、専門家会議を別に作ること自体が駄目だとは思わないが、一方で、専門家会議のメンバーも対策本部幹事会に呼ぶべきである。

 

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