「外国人献金賄賂問題」1・外国人献金禁止制度はどのようなものか

要点

• 外国人献金禁止は外国から日本の政治家が買収されないようにする制度であり、それは国民主権の問題でもある。
• 現状の外国人献金制度には穴があり、今回のカジノ献金問題はその脆弱性をはっきりと示した。

日本において、外国人による献金は一律に禁止されている。それは政治資金規正法第二十二条の五に基づいており、以下のように規定されている。

第二十二条の五　何人も、外国人、外国法人又はその主たる構成員が外国人若しくは外国法人である団体その他の組織から、政治活動に関する寄附を受けてはならない。

日本政府の説明によると、「政治や選挙が外国人や外国の組織、外国の政府など外国の勢力によって影響を受けることを未然に防止しようという趣旨」によって、この条文が制度化されている。この説明であれば、外国人献金禁止は行政権の範疇になるが、日本国憲法では国民主権がはっきりと規定されている。外国の勢力が日本の政治や選挙に影響を与えるというのは明らかに国民主権と対立する問題であり、外国人から寄付を受け付けるような法改正は違憲になる可能性が十分にある。

政治資金規正法では外国人献金に対する罰則規定が決まっており、それは以下のようになっている。

第二十六条の二　次の各号の一に該当する者は、三年以下の禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

三　第二十二条の三第六項、第二十二条の五第一項又は第二十二条の六第三項の規定に違反して寄附を受けた者（団体にあつては、その役職員又は構成員として当該違反行為をした者）

つまり、外国人献金を受けると三年以上の禁固又は五十万円以下の罰金に処せされる。

ここに幾つかの論点が存在する。まず最初に、処罰の対象は「寄附を受けた者」である。つまり、秘書が外国人から寄付を受け付けた場合、秘書も訴追の対象となる。もちろん、政治家本人が寄付を受けたことを知っていれば、同様に刑罰の対象となる。秘書がやったという言い訳は通じるが、それが事実である場合、秘書が訴追を受けることになる。

この規定は形式犯であるため、外国の勢力から寄付を受けるとそれだけで構成要件に該当する。更に、同時に違法性が生じる。ただし、これが故意犯かどうかは重要な分岐点になる。故意から過失までの間には業務上過失、重過失等があるが、故意であれば確実に犯罪となり、過失であれば罪は問われない。業務上過失の規定はないため、重過失が犯罪になるかは論点になり得る。

例えば、資金の拠出者が外国人のような名前で国外に住居があれば、ほぼ外国人にしか見えない。そのような人物から寄付を受ければ、ほぼ重過失は成立すると思う。ただし、どのような状況が重過失になるかは難しい。

よく起こる問題として、在日外国人が献金をして政治家や政治団体側が気づいていないケースがある。その際に、本当に気づいていなければ犯罪を問いようがない。そうなってくると、どこまでが重過失の範囲かが重要なポイントになる。

全ての人が正直に事実を語るのであれば、それでも意外とすんなりと故意から過失までの範囲は規定できるかも知れない。しかし、現実的にはそうはならず、故意であっても知らなかったと主張する事も多いだろう。

外国人献金において、故意と過失には大きな差が存在する。仮に、某外国政府が某政治家を貶めるためにわざと外国人献金をした上で、後にこの事実を公表すると、その政治家を追い落とせる。この結果は外国人献金禁止の趣旨そのものであり、故意と過失の立証をちゃんとしなければ、大きな禍根を生み出す。

過失を犯罪にするためには、献金者のバックグラウンドを精査できるようなシステムを作る必要がある。しかし、そのようなシステムは個人情報を政治家や政治団体に流すという意味でもあり、おそらく不可能である。

一方で、現状の外国人献金禁止規定には本質的な穴がある。500社によるカジノ献金問題はこの穴を突いており、結果として、この脆弱性は更に悪用される可能性がある。今回はカジノ問題に過ぎないが、重大な国益に関わる問題で日本の政治家は買収される可能性があり、その際に現状の法制度の穴を利用されると誰も犯罪に問えないまま買収が実行される可能性がある。