要点
- 地域共同体が大きく変容しており、虐待の歯止めにならなくなっている。
- 少子化により、以前よりも親子が孤立している。
- これら二つの変化が児相への通報を増加させている。
児相への二番目の相談経路は近隣知人からの通報である。昔の日本であれば、集落で起こった問題は集落の中で処理されることもあり、必ずしも警察や児相に通報されるということはなかった。それが良いかどうかは別問題であるが、時間の経過と共に地域共同体のあり方には変化が起こっている。田舎の集落や高度成長期に出来たような団地ではある程度昔ながらの地域共同体が維持されていたが、現状ではその内部だけで問題が処理されない状況になっている。
つまり、昔から虐待や家庭内の暴力があったのは事実であるが、その一定程度が共同体の強さによって抑え込まれていた。それは共同体が歯止めになって暴力を抑えていたという意味であり、また、共同体の内部で問題が処理されていたという意味でもある。
共同体内部で処理できなれば、近隣の住民は暴力や虐待を放置するよりも警察や児相に連絡した方が良いということになる。現代の法治国家にとってはそのような行動の方が普通であり、結果として、家庭内で問題が起こった際に警察に通報され、そこから児相へと連絡が行く仕組みになっている。あるいは、近隣知人が直接的に児相へ通報するようにもなり、この二つが児相通報の主要経路になっている。
また、現状の変化は単に共同体が変容したという理由だけの結果ではない。そもそも、世帯主の移動が激しくなったために近隣との結びつきが弱い住宅地に住んでいる人が増えている。日本の社会は既に弱い地域共同体へと遷移しており、親子間や夫婦間の問題でもそれが過激なれば、公が介入するようになっている。
共同体の変容と同時に少子化は違う問題も突きつけている。あまりにも子供の数が減りすぎると、周りに同年代の子供がいない家庭が出てくる。そして、結びつきの弱い共同体内では親子が更に孤立化するようになる。親側も誰にも頼れない状態が生まれ、子供も誰にも助けられない状況が生まれる。
このような結果として、自殺に繋がるような重大な虐待や心理的困難が増えている。
その前段階の現れが虐待の増加である。つまり、昔から虐待の問題は存在したが、現在では虐待が増えており、それが児相への通報増加として現れている。では、日本は今後どうすれば良いのかというのが最後の問題になる。
結論としては行政が虐待に対して早期介入するしかないが、それについてもう少しだけ議論を深める。