要点
- 児相への通報が増えたのは警察との連携が進んだからである。
- ただし、警察連携を除いても児相への通報は増加している。
- 特に、近隣住民からの通報が激増している。
児相への通報は爆発的に増えているが、それは児相と警察の連携によるところが大きい。それは通報の相談経路の構成比を見れば明らかになる。
この図にある通り、2008年の児相の相談構成比は家族、近隣知人、福祉事務所、警察が14%で並んでいた。これが2017年には様相が大きく変わり、児相通報の半分を警察が占めるようになった。ただし、警察からの通報を除いても、児相への通報が激増している事実は変わらない。
以上のように、警察からの通報を除外しても、ここ10年間で児相への通報は激増している。
前のグラフに戻るが、警察に次ぐ児相への相談経路は近隣知人になっている。2008年においても2017年においても、近隣知人の児相への通報構成比率はほとんど減少していないレベルにある。実際の構成比を見ると一時期近隣知人が最大の相談元になっていたが、それが警察に抜かれ、他を引き離して二番になっている。
つまり、2008年から2017年において、児相の通報は3倍近くになっているが、近隣住民からの通報も3倍近くになっている。別の観点から見ると、家族や福祉事務所からの通報は増えているものの、構成比ではかなり減少している。
これらの数字を再解釈すると、児童虐待が増えたというよりは警察との連携が増えた、あるいは近隣住民が児相に通報するようになったとも言える。あるいは警察が介入するようになった結果、問題が顕在化しただけで児童虐待自体は増えていないと主張することもできるし、実際にそういう人もいるだろう。
確かに、以前から児童虐待の問題はあり、近年になって突然始まった現象ではない。それが現在においては、このような家庭の問題に行政が介入するようになり、その結果として通報件数が増えたとも言える。
しかし、通報が激増している一方で、子供の数は減少している。そして、子供の自殺の数は増えており、その2番目の要因が親子関係のトラブルであり、その要因は毎年増え続けている。
要するに、児相への通報が増えたのは警察との連携が増えたからであるが、それだけが要因だと考えると家庭要因による子供の自殺が増えている理由が説明出来なくなる。児童虐待による自殺は最終手段であり、自殺と同様に、虐待も間違いなく増えている。
また、別のグラフで示したように、警察からの通報を除いても児相への通報が激増しており、テクニカルな問題だけでなく、児童虐待の増加という本質に目を向ける必要がある。
それを次にもう少し考える。