
要点
- ソフトドラッグが合法化されても、ドラッグ利用者はソフトドラッグの世界に留まらない。
- 需要がある限り、地下経済には金が流れる。
前回の議論の中で、オランダにおけるアンフェタミン系の使用頻度が高いグラフを取り上げた。アンフェタミン系のドラッグの中で一番蔓延しているのはMDMAだが、EUの統計ではエクスタシーが別立てで採り上げられている。調べ直したところ、オランダを中心として旧来のアンフェタミンも流行っているようであり、MDMAはエクスタシーとして特別に項目が作られていた。
EU統計について、これ以外にも付記しておくが、以下のグラフは直近一年間の男性のドラッグ使用のグラフであり、それは前回に取り上げたアンフェタミンとコカインにおいても同じである。男性と女性で使用比率が違うため、問題の所在をはっきりさせるために男性のグラフだけを出している。
エクスタシー、つまり、MDMAはオランダでの使用率が一番高くなっている。コカインの使用頻度もトップクラスに高いことを考えると、これは単なるドラッグの嗜好の問題ではない。現実的にはソフトドラッグが合法化されても違法ドラッグが減ることはなく、ハードドラッグが増えるだけだということを結果が示している。
問題はどうしてこのような現状になるのかということである。
第三者の観点からすると、大麻が合法化されたのだから、ドラッグ使用者が大麻の世界に留まるというのは合理的な結論に感じる。一方で、ドラッグ使用者はそのように考えていないため、ハードドラッグの利用が増えている。結局、リスク選好の高いドラッグ利用者は大麻に慣れてくると更に強い効果を求めるようになり、より危険なドラッグに手を出すようになる。
そして、現実的には大麻が容易に手に入るようになると、より危険なドラッグに手を出す人が増えるようになる。そして、アンダーグラウンドの世界はこの需要を満たすように供給側を整える。
大麻が合法化されると、一般の製造メーカーが大麻を供給するようになり、地下経済にはお金が流れないようになる。それは事実であるが、それだけで地下経済が根絶やしなることはない。彼らも生きるために違う需要を掘り起こすはずであり、ドラッグという観点からすると、それはハードドラッグ以外にはない。
裏社会がハードドラッグを供給するから問題が起こるのか、あるいは、ドラッグ使用者がより強い効き目を求める結果としてハードドラッグが増えるのかは難しい議論である。ただ、そこには需要と供給の一致があり、結果として市場が発達する。世の中を完全に統制することは不可能であり、それが違法な市場であったとしても上に政策があれば、下に対策ありという状況が生じる。
結果として、ソフトドラッグを合法化しても違法ドラッグの使用量は変わらないため、ハードドラッグの使用が増え、地下経済には依然としてお金が流れる。つまり、ソフトドラッグを合法化して、何かが良くなることはない。